講座情報

LS塾第3期第4回において 平田倫子氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2019年10月16日(水)18:30~

2.講義:「ベルギーの豊かなライフスタイル」

3.講師:平田倫子氏(TISTOU株式会社 代表取締役社長)


4.講義の内容


 

学業卒業後に花屋をこころざし渡欧、ドイツや、世界一と言われるベルギーのフラワーショップなどで5年間修行する。その後、ベルギーで感じた花を取り巻く生活シーンの豊かさと日本の花の扱いに差異を感じ、フラワーベースを輸入・販売する代理店TISTOU株式会社を1998年に設立。ベルギーでは、花屋が花だけでなくフラワーベースを始め花のある空間全体を提案する事ができた。花屋で働く人のステイタスも高い。一方当時日本の花屋は花を販売するのみで、それらの多くはバケツに陳列されていた。美しいフラワーベースがあれば、日本の花のあるシーンも変えられると考えた。

様々なスタイルがあるヨーロッパのインテリアの中でも、フランス、イタリアのハイソサエティな住宅は、受け継いできたクラシックなスタイルが多い。北欧はシンプルでナチュラルな空間に大胆で鮮やかなデザインのものをプラスする。
ベルギーの隣国オランダは、エキセントリックでポップなデザインが得意。

対するベルギーは質感、量感、素材を重視。古き良きものを大事にし、使いやすいものよりも良いものを長く使う傾向にある。また、「ベルギー人はお腹にレンガを持って生まれてくる」ということわざがある程、家創りにこだわりがある。若いうちから家を持ち、長い時間をかけて少しずつ改築する。僅かな時間でも客人を招き、家や新しく入手したもの等披露し会話を楽しむ。その時間がいかに大切で豊かなことかを理解している。故に空間に対する意識も高い。

雨の日が多いベルギーでは、曇天であってもできるだけ屋外でくつろぎ自然を堪能するので、アウトドア家具が優れている。自然を慈しみ、サスティナブルで環境に配慮した住宅は住民税が軽減、また地熱発電の普及率は80%の程にもなる。

ベルギーの人は思い入れのある住空間と、そこで過ごす暮らしを大切にしている。
人が集って楽しく過ごすことが時間の価値を上げ、人生を豊かにしてくれる。そのための環境を整えるのがインテリアの重要な役割と考える。

このようなベルギーのライフスタイルが本当の豊かさであると考えるならば、インテリアのある空間を提案する者は、その空間を人々が使用することで時間をいかに彩ることができるかを、またインテリア商材を提案する者は、商材を作る人々の想いや哲学を伝えていかなければならない。

モノを通じ、人と人がその「わくわく感」を共有する場を提供してこそ、その人のライフスタイルをより濃密にさせることができると考えている。

 


5.受講生からの感想


モノを売るときに、どう売るかということばかりが先行するとブランドがぼやけてしまう。ブランドやデザイナーが優れていることだけでなく、なぜ私達がこのモノを選び勧めることに喜びを感じるか、そういった一歩入り込んだコミュニケーションからモノの付加価値が生まれると感じました。


6.塾長からの感想


ベルギーを中心にヨーロッパのデザイナーやアッパーの生活空間を見つめ紹介してきた講師の圧倒的な経験量が、塾生にとっても未知のライフスタイルを想像できる良き講義でした。何より、塾生の誰もがベルギーに憧れてしまう講師の語り口は、何が人を惹きつけるのか再考するチャンスとなりました。


 

2019年10月16日

オープン塾(HEAD研究会 ライフスタイルTFとアートTFでの共催)が9月20日(金)17:30より開催されました。


生活空間とアートをテーマに、ライフスタイルTFとアートTFの共催にて以下イベントが行われました。
多くの皆さまのご参加誠にありがとうございました。今後ともライフスタイル塾を宜しくお願いいたします。

<開催場所:ASJ東京CELL>

 

<講師:山本豊津氏> <講師:岡田勉氏>
塾の後は同じ場所で懇親会もございました。 懇親会では食事をしつつの交流の場となりました。

【テーマ】
 「生活空間とアートの楽しみ方」
  生活空間とアート ~暮らしを彩るアートの楽しみ方~

【内容】
“生活を彩るアートの楽しみ方”について、講師それぞれの経験や立場からお話しいただきます。
ディスカッションパートでは、前談を踏まえ、建築家三沢亮一氏をファシリテーターに迎え、これからのアートビジネスの可能性を考察します。
 岡田勉氏からは、「アートが持つ創造性」に着目し、アートやアーティストがその創造性をどのように暮らしや街・人にインストールしているのかということについて、自らの取り組み・手がけたビジネスをモデルにご紹介いただきます。
現代に生きるアーティストとのコラボレーションにより、多くの人々がアートに触れる機会を生み出してきたプロセスに「アートが持つ創造性」を探ります。
 山本豊津氏からは、いわゆるアートコレクターと呼ばれる人々が、何を目的にアートを手に入れ、どのように生活に取り入れているのか、その手助けをする画廊の立場からご紹介いただきます。
日本の芸能人やスポーツ選手が成功するとたいてい車や家を購入するのに対し、海外の成功者がアートを購入していることに言及し、その様な観点から、これから求められるアート・注目のアートについてお話しいただきます。

【講師】
●岡田勉氏
(プロフィール)
1988年武蔵野美術大学卒業後(株)ワコールアートセンター入社。同社が運営する複合文化施設「スパイラル」のシニアキュレーター兼プロデュース部部長。スパイラルで行う現代美術展・イベントを企画するほか、スパイラル館外の施設、企業、自治体のための事業、展覧会企画、アートプロジェクトなどを担う。2009年から横浜市の創造界隈拠点「象の鼻テラス」のアートディレクターを務める。 2014年には道後温泉で「道後オンセナート」をプロデュース。宿泊できるアートをエリア内ホテルに設置。道後温泉ホテル「茶玻瑠」ではマリメッコの元デザイナーで現在陶芸家として活躍する石本藤雄氏を起用、2018年にエグゼクティブフロアをプロデュースした。

●山本豊津氏
(プロフィール)
武蔵野美術大学造型学部建築科卒業後、衆議院議員村山達雄氏の秘書を経て、1981年より東京画廊に参画、2000年より代表を務める。世界のアートフェアへの参加や、展覧会や都市計画のコンサルティングも務める傍ら、日本の古典的表現の発掘・再発見や銀座の街づくり等、多くのプロジェクトを積極的に手がけ、また若手アーティストの育成や大学・セミナー・講演等、アート活性の為に幅広い領域で活動。 2014年より4年連続アートバーゼル(香港)、2015年にアートバーゼル(スイス)出展。全銀座会催事委員会委員。日本現代美術商協会理事。現代美術商協会(CADAN)副代表理事。武蔵野美術大学芸術文化学科特別講師。
著書に「アートは資本主義の行方を予言する」 (PHP新書)、「コレクションと資本主義」(角川新書)がある。

【場所】
  ASJ東京CELL
  <https://cell.asj-net.com/tokyo/>

【開催日時】
  9月20日 金曜日

【開場(受付開始)】
  17時00分

【開催時間】
  17時30分~21時00分頃


2019年09月16日

LS塾第3期第3回において 亀嶋庸一氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2019年8月28日(水)18:30~

2.講義:「ライフスタイルとしての大学」

3.講師:亀嶋庸一氏(成蹊学園学園長、成蹊学園名誉教授)


4.講義の内容


 

第一部 大学という教育の場を取り巻くライフスタイル

まず、大学教授として教育の場を取り巻くライフスタイルから整理してみる。
イギリスの大学に通っている際、イギリスでは祝日であっても講義が休みではなく、日本と世界との一般的なスケジュールの差異に気付くことがあった。こういった差異を調整するかのように現代の日本においては祝日に授業をすることが多くなってきている。
変化の流れは大学の教授たちを取り巻く環境にも見られ、長期間の研究が認められ「恵まれている」といわれていた日本の研究環境も、短いスパンでの研究成果が求められるようなアメリカ等の評価基準に移行してきている。
また大学にはIT化の波も顕著に影響が出ている。昔は論文を書く際には手書きであり、図書館に足を運んで調査するのが常であったが現代においては自室で論文検索を行い、ダウンロードができる。これらの変化によりピンポイントでの作業ができることになった。
しかし、いわゆる効率化というものが評価される一方でいろいろなものとの出会いの場が失われているといった面もあると考えられる。


第二部 現代社会論からみるライフスタイル

第二次大戦後の資本主義においては商品の魅力を宣伝することで需要を高め、消費が創られていた。この構造は今日まで変わることなくより精錬されてきており、その結果、商品のPRのレベルが高まった。これによりいわば「消費の神話」化の極点に行き着いた感がある。
しかし、消費は人々の価値観により形成される一面があることを忘れてはならない。
ダンヒルとZippoのライターのいずれを使うのか。乗る車はベンツか、フィアットか、中古外国車なのか。自分のライフスタイルを象徴するモノを持つことが重要視される。(参考 1970年J.ボードリアールの「消費社会の神話と構造」)。
また、一方で消費社会のあるべき姿を考えるために参考にしたいものとしてアーレントの消費社会への批判的視点がある。

アーレントは人間を構成する3つのアクティビティを
1「労働」   :食料などの生命維持のための生産 労働と消費のサイクル
2「仕事」   :人間の生活が生み出した人工的世界を構成する耐久性を有したモノの製作
3「アクション」:モノ主体ではなく人々の間にて使用され言論や行為発言等
と定義した場合、労働による消費財の生産量が過剰になった場合、仕事が生み出す耐久財が消費財化していくこととなり、仕事が労働化していくとしている。このような消費社会は仕事やアクションを高めることにつながることはない。
これらのことを理解しているとすれば、例えば、日本の人口減少も重なり定員割れが増加する大学において、施設設備への投資によるイメージアップにより定員を確保しようとすることは果たして正しい対応策なのであろうか。

日本の幸福度は低い。それは協調性を強いられ人生選択自由度・寛容性が低いということに起因する。一方で欧米では、人生選択の自由が広く、自身の評価が得られるところを目指す。
与えられ、強制されるのではなく、行動し、自己決定し、自分を磨くことが人間としての幸福度を高めると認められる時代が到来していることを私達は認識しなければならない。

 


5.受講生からの感想


暗黙的な問掛けの多い講義でした。考えるにライフスタイルとは、近代において環境が整ったことにより許された消費者による本来の消費への動向であるのだろうと捉えることができるのだと思います。だとすれば労働の次にある豊かにするための仕事から創造された成果物は、人間の幸福を根源として創造されることとなり、ライフスタイルとはモノから強制されない自由な幸福を求めることといえると思いました。


6.塾長からの感想


社会に出て久しぶりに大学の講義を受けた気持ちになりました。日本の未来を担う学生のいまの現状を知り、塾生にとっても新鮮な学びの体験になったことと思います。
また、「豊かなライフスタイル」の定義を社会的な推移とともにお話していただき、私達の気づかない新たな視点から社会を顧みる貴重な機会となりました。


 

2019年08月28日

LS塾第3期第2回において 桐山登士樹氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2019年6月26日(水)18:30~

2.講義:「住空間2020現在のトレンドから透視する」

3.講師:桐山登士樹氏(株式会社TRUNKディレクター、富山県美術館副館長、富山県総合デザインセンター所長)


4.講義の内容


 

世界25カ国のエル・デコが選ぶベストデザインに送られる「エル・デコ インターナショナル デザイン アワード(EDIDA)」。この賞では近年日本の生活様式にヒントを得たデザインが取り上げられている。例えば、屏風(パーティション)等で空間を仕切ったり、提灯の明かりのように暖かみのある照明が求められている。このデザインの流れは、日本をピックアップしたトレンドというだけではなく、昨今のライフスタイルのダイバーシティ化に伴い様々な変革の一端と言えよう。とりわけ日本のものづくりが注目されているのは嬉しいことだ。

この変革の必要性が意味するところは、ダイバーシティの中におけるデザインのもたらす効果が大きく起因していると考えられ、つまりデザインが個性を表現する手法として重要であると考えられるからこその変革であると考えられる。
そういった意味で日本等といった国や地域自体にも一つの個性としての意味が与えられ、それを取り入れたデザインが発達することになるのである。日本の街づくりという観点からすれば、各国の都市と類似した都市が評価されるということはなく、むしろ日本らしさを出すことが重要であると認識されていることからもこういった流れの表れが見える。

またこの個性を表現することは国や地域だけではなく、個人においても重要である。
個人の表現の移り変わりをライフスタイルという視点から考えてみると


”衣”

最も個々のクリエイティビティを自己表現できる一つである。
流行としては土台になりやすいTシャツ+ジーンズ等のカジュアルスタイルが進んでいる。

”食”

健康志向に関心が高まっているが、世界的な人口増、高齢化のなかで食は重要なテーマである。人として、これまで以上に健康に意識が向き、流れを作り出しているといえる。

”住”

日本においてみれば、人口減少等も影響し「みんなで大きな家」というものから「個々が住みやすい家」に変わってきてい  る。

 

というように、これらの流れから個性を出すためには個性のあるモノを買うだけではなく、自由な表現の場が形成されたことにより、モノの使い方に個性を求めることができることに注目が集まってきていると考えられる。
例えば、イタリアのミラノマンション PORTA NUOBAではマンション購入時、キッチンは日本のように備え付けではなく別に個人がキッチンを購入することで、個性を表現している。

また、昨今においてはネットワークビジネスにおいて「シェア」することが注目されている。
これはモノを所有することによるアイデンティティの表現から、モノを使ってどのように楽しめるかにその評価が移りつつあることに他ならない。

こういったダイバーシティ化の実現しつつある現代社会において、個人の自由な主張を実現することがデザインの役割であり、追求すべき課題である。

だとすれば、所有せず個人の個性を表現する現在において、建築の在り方にも価値の変革が求められている時代にさしかかったと考えるべきなのではないだろうか。

 

 


5.受講生からの感想


デザインの多様化の意味を考える上で、その発生の原因となったものを事例を交えて捉えることができる講義でした。この講義の内容を踏まえ、今度デザインが向かうべき方向には何があるのか、何があるべきなのかに思いを馳せる楽しさを身に着けることができる回でした。


6.塾長からの感想


順序立てて一つずつ説明していただいたことにより、当塾の目的を基礎から学び、また今後の塾生の方々の担ってほしい役割を理論的かつ直感的に理解することができる内容で、大変ありがたい講義となりました。


 

2019年06月26日

LS塾第3期第1回において 古澤海氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2019年5月15日(水)18:30~

2.講義:「心と体とライフスタイル」

3.講師:古澤海氏(ライザップ株式会社パーソナルトレーナー)


4.講義の内容


 

フィリピンへの留学後、日系企業に就職し、そこで出会った同僚の方の影響でボディメイクへの道に進むこととなる。ライザップに入社してからは100人以上の方のトレーナーを務め、ボディメイクを通じて色々な私生活に影響を与えてきた。そんな中で本当の健康とは肉体的・精神的・社会的、及び霊的健康の全てが満たされた状態であり、そのためには「人々が本当の健康になるためには、自身のライフスタイルを見直し、人生に必要なものを得ること」が必要であると考えるに至っている。


このように本当の健康を実現するためには多面的な充実が重要となるが、その中で最も身近なことから改善できるものの一つが肉体的な充実であると考える。一般的に肉体的な充実といえば筋肉トレーニングを考えるが、その貢献度はトレーニングよりも実は食生活のほうが大きく影響することがわかっており、トレーニング3に対し食生活が7程度と倍近い割合となるといわれている。
食生活はトレーニングした筋肉を維持させることにとても重要であり、規則正しく1日3食、高たんぱく、かつ低糖質な食事を心がけることでトレーニングの成果を効果的に身につけることができる。こういったトレーニングだけでなく食生活へのアドバイスも行うことが我々トレーナーの役割であり、まさに人間の身近なライフスタイルに対して責任ある立場であるといえる。


ライザップではこの社会的責任を果たすため、人間の良いサイクルを生み出すことを方向性とし、企業内パーソナルトレーナー、ヘルシーフード、レストラン開発、レンタルオフィス、コンサルタント等々、健康面においてライフスタイルを支えていくことを目的としている。

 


5.受講生からの感想


「ハコ」から「コト」というライフスタイル塾において、まさに「コト」にスポットを当てた回で、誰もが持っている「健康でありたい」と思う欲求は、「幸せでありたい」欲求に直結しているのだと考えさせられる講義でした。そして、それは劇的な変化というより日常のライフスタイルを整えることで得られ、自分たちが行っている事業が健康と幸せを考えて行われなければならないという責任感を持てる回となりました。


6.塾長からの感想


色々なライフスタイルを考えてきたが、それら全てに共通するのは人間のライフスタイルである。そのライフスタイルへのアドバイスを行ってきたトレーナーの方から具体的な手法や体験を交えつつ話を聴けたことは、いつもと違った視点でライフスタイルを考える良い機会となった。


 

2019年05月15日

LS塾第2期第4回において 道野和枝氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2018年10月17日(水)18:30~

2.講義:「NY/パリそして札幌の空」

3.講師:道野和枝氏(salon de michino代表、言語教育家)


4.講義の内容


 

平均寿命が延びリタイア後の人生が30年という時代、この第二の人生を元気で何かに感動し、また挑戦し、仲間と集い楽しい時間を過ごすためのライフスタイルをプランニング、実践している。

「之を知る者は、之を好む者に如かず、之を好む者は、之を楽しむ者に如かず。」と論語に有名な節がある。
「知るというのは、好むということに及ばない。好むというのは楽しむということに及ばない」
吉川幸次郎の論語解説によると「知る」とはそのもの、あるいは事柄の存在を知る事であり、この段階では対象は自己の外にある、「好む」とは対象に対して特別な感情を抱くことで、対象と自己と一体ではない。「楽しむ」とは対象が自己と一体、自己と融合することとある。

趣味の骨董を通してそれらが生産された国やそのものの素材に興味を持ち、子供たちの住むニューヨーク、パリへの往来を重ねるうちにパリのBelle Epoqueを彷彿させてくれる建築物やpassageに感動、内装にも興味を持ち始めた。特に、プロバンスに滞在中にVezelayにあるRelais&Chateauxcのことを知り、その加盟基準の5つのC、即ち、Courtesy、Charm、Character、Calm、Cuisineを体験した。今年の8月にはカリブ海にあるフランス領のSt Barthelemy、イタリアのコモ湖、スイスとの国境のLuganoでは有名デザイナーが競い合う家具、調度品が設置されているホテルに滞在し非日常を楽しんだ。

これまでに38年になる日本の古家の大改造から、パリの息子のアパート、ニューヨークの娘のアパート、そして札幌のアパートそれぞれの内装を試み、終わりない挑戦の真っ只中。

古代ローマのストア派の哲学者セネカが「真の幸福とは現在を楽しむこと、楽しめること」また「振り返るに値する過去を持つことが重要」と、この過去とは正に特別な財産のこと。

そんな財産を残せるようなライフスタイルをこれからもプランニング、実践し続けたい。

 


5.受講生からの感想


その場所に生活をしないと得ることができない複数の都市におけるそれぞれのビジネスの特色や、人々のデザインの発信の方法と受け止め方を体感でき、またそれらを5つのCをテーマに比較しつつ丁寧に解説いただけたことで、本質の一端に触れることができたと思いました。今回挙がったそれぞれの都市は常に我々が興味を持つ都市でもあるので、そこでのライフスタイルを東京や他の都市を理解する上でも役立てていきたいと思います。


6.塾長からの感想


これまでのご主人の赴任先における世界各地でのご経験や、現在のパリ、ニューヨーク、札幌を巡るライフスタイルについて、豊かなご経験を語っていただき、我々も新鮮な感動を感じ取ることができました。本塾としても、ぜひ今後も引き続きお話をしていただきたいと思います。


 

2018年10月17日

LS塾第2期第3回において 武石正宣氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2018年8月29日(水)19:00~

2.講義:「ライフスタイルと照明デザイン」

3.講師:武石正宣(有限会社ICE都市環境照明研究所所長)


4.講義の内容


 

蝋燭には、洋蝋燭と和蝋燭がある。
洋蝋燭は、縦に細い炎を灯す。これに対し和蝋燭は大きく太い炎を灯し、洋蝋燭にくらべ、揺れの少ない炎となる。
この違いは、西洋と日本の文化の違いに直接起因している。

西洋は、蝋燭をシャンデリアのように多く灯し、部屋を明るく照らした。
これに対し日本は、一つの蝋燭で部屋中を照らすことを目的としており
和には一つの蝋燭で照らし出される空間内での美しさであるという一面に気付かされる。

現代における京都祇園では、昼と変わらない明るい照明の中で歓談されるが、
建物の装飾や、芸子の着物は、歴史を考えれば、少ない蝋燭の灯の中で美しさを求めたものであるといえる。事実、照明を落とした中でのそれらは、妖艶でありかつ雅やかな本来の和の様相を醸し出す。

これらのことから、照明とは、空間の背景や、目的に光が寄り添うことを理想とするものだといえる。

その手法としては、サーガディアンリズムや、色温度を考えることが重要であり
それによって、人を迎え入れる、ストーリーのある光空間がデザインされる。

また、星野リゾートでは軽井沢の高原、京都の竹林、竹富島の石垣、バリのリゾート、そして東京のプライベート空間といった地域性から得られるデザインを活かすことが照明を考えるうえで大切な要素となった。

照明デザインは、それを利用する人々の歴史を考えずには理想に近づくことはできない。

照明の技術も飛躍的に伸びている現代において、自由な発想の中で、今後様々な光空間が現れることとなる。
その中で、ひと際光り輝くデザインとなるのは人々の歴史や嗜好に考えを巡らせた寄り添う光空間であるだろう。

 


5.受講生からの感想


現在の明るい機能的な光ではなく、古来日本の日常を照らした蝋燭のような、そんな闇と共存するような光によって、艶やかにも優しい「和」の本来の世界が浮かび上がってくる。
これらのことから、その場所に根付いた建物や生物をその環境にあった光で照らすことによって、その地域おける本来の伝統や文化を表現できるものであると、照明の在り方について学ぶことができた。


6.塾長からの感想


今回は講師のお二人が感動的な和服で登場するなどのシーンがあった。塾会場自体を暗闇にし、その中に和蝋燭一本だけを灯すことにより、塾会場を魅惑的な舞台に変えられており、照明の効果を身をもって経験できた。また、これまで手掛けられていた作品を通じて、照明の光の向き、量、照らされる素材等を調節することによって如何に美しく表現できるかということをお話し頂いた。



2018年08月29日

LS塾第2期第3回において 齋藤上太郎氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2018年8月29日(水)18:00~

2.講義:「進化する伝統」

3.講師:齋藤上太郎(株式会社三才 代表取締役社長)


4.講義の内容


 

世界の視点から見たとき、日本は様々な独特の伝統を有している。

その一つである日本に古来からある着物は、もっとも日本の伝統を体現していると思う。
着物自身の柄や、生地はそれだけで人を魅了するに余りあるが、
着物の神髄は、着衣した人物の美しい振る舞いにも発見することができるからだ。

2016年レディー・ガガの来日の際、彼女に着物をプレゼントしたことがあった。
以前より日本の着物に大変興味が有る事を聞いて、来日の記念に着物をプレゼントさせていただいた。
プレゼントされた彼女は、大変喜びつつ、その着物を着ることになったのだが、
彼女は、その着物を着崩すことなく丁寧に着衣していた。

他の人からすれば彼女の奇抜な身に着け方を求めていたかもしれない。
しかし、彼女は「ルーツがあるものを崩さず大切にする」という振る舞いを見せてくれた。
これにより彼女は、着物というものだけではなく、着物が持つ文化や歴史を見事に着こなしていたといえるだろう。
こういった伝統的美意識を生む必然も着物の魅力であるといえる。

一方で、着物は、新たなデザイン性を持つ必要もあると感じる。
これまでの着物は、色合いや柄といったデザインを開花させてきたが、
変動する社会の基で着物の可能性を広げようと考えるならば、
新たな価値感を作り出す様な美意識の追求をすべきであると考える。

現在、年2回着物のファッションショーを開催しているが、
ここでは、着物の色柄だけではなく、スタイリングを発信している。
このような活動を通じて、今後も着物の魅力を表現するとともに、着物の広大な可能性を追求することに注力していく必要がある。

伝統工芸を扱うものは、伝統を守ることと、新しい分野を追求することを常に求められる。

その宿命に人生を賭して追求し続けるものが、『進化した伝統』を体感できる人物となるだろう。



5.受講生からの感想


着物を知り尽くした人間だからこそ、伝統とデザインの両方の観点から着物の本質を認識されているのだと感じた。
そういった、着物を極め、極めた先を様々な視点から捉えようとした結果,魅力的な「ジャージキモノ」という新たな商品に行き着いたことが分かった。


6.塾長からの感想


日本の工芸的価値と日常の中における機能的価値を同時に持つ着物を講師自らが身に着けることによって、日本の美しい立ち居振る舞いが表現されていた。
日本人が日常の所作に求めてきた美しさを体感できた貴重な時間であった。

講演後にあった武石様とのトークセッションでは、和のテイストが組み込まれた「GINZA SIX」のデザインも紹介された。
常に既存の価値感をリードするその姿勢は、日本人や海外の方々にも高い評価を受けていることが理解できた。
和の、古来の価値観だけでなく、まさに講師のコンセプト『進化する伝統』を体感した時間であった。


 

2018年08月29日

LS塾第2期第2回において 戸倉蓉子氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日程:2018年7月18日(水)20:15~

2.議題:「ライフスタイルと健康」

3.講師:戸倉蓉子(株式会社ドムスデザイン取締役)


4.講義の内容


 

平均寿命と健康寿命に約10年もの差がある日本で、これから高齢者に求められる環境とはどの様なものか、病院や高齢者施設のデザインを通して考える。

病院建築家のルーツであるナイチンゲールは、戦争時に病院での患者の死亡率を激減させた功績を持つ。彼女の覚書に書かれた言葉、それは「回復に必要なもの、それは環境である」という言葉だ。また、建築とデザインの勉強をしたイタリアでは、いくつになっても自分らしく暮らす高齢者住宅の入居者の姿から「環境で人を元気にする」という自身のミッションを形成するヒントを得た。

新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静けさに加えて、「感動」がこれからの環境作りの大きなポイントとなる。デザインは価値を作る仕事であり、その力で感動・生きがいを作り出す事ができる。例えば、楽しく過ごせる病院作りをする事で患者は自然と歩く機会が増える。運動量の増えた患者が夜に安眠する事は職員の幸福にも繋がり、魅力的なデザインの病院では患者家族の滞在時間も長くなるのだ。

入居者が施設に合わせる日本に対して、入居者に合わせる海外の高齢者施設には、最期までその人らしく生活をして欲しいという願いが込められている。健康で長生きをする環境作りが、これからの日本にも求められる。



5.受講生からの感想


画像で紹介された実例に大変説得力があった。日々、デザインの持つ力に感嘆させられる事が多いが、病院や高齢者施設での事例に触れる事は少なかったため、新鮮な気持ちで拝聴させていただいた。


6.塾長からの感想


何よりも戸倉さん御自身がデザインする事を楽しんでいる姿が印象的だった。女性ならではの柔らかさ、強さで、既成概念を打破して来られたと想像をしたのだが、講義での語り口にも第一に物事を楽しむ雰囲気が溢れて感じられた。



2018年07月18日

LS塾第2期第2回において 玄光日氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2018年7月18日(水)18:45~

2.議題:「アジアから見た日本のマーケット」

3.講師:玄光日氏(株式会社YDcapital代表取締役社長)


4.講義の内容


 

年収3,000万円以上、投資可能額100万ドル以上を保有する富裕層の年代は、中国と日本で大きく異なる。日本に比べて若い世代が中心となる中国富裕層の価値観に迫る。

中国の富裕層が増えたのは、政府が経済に力を入れ始めた文化大革命以後の1978年頃からである。現在の50代は国内の製造業で、30-40代はITで富を得た。彼らの70%は海外投資を行っており、主目的は子供の教育である。投資対象は証券や保険が中心だが、成長率では不動産の方が大きい。香港、アメリカ、オーストラリアが上位を占める投資対象国の中で、16位に入る日本への投資は今後増加する事が見込まれる。

日本の不動産を中国富裕層が買い求める現象について、危機感よりもそこに価値がある象徴と捉える。香港を例に挙げると、直近18年で年間訪問中国人は20倍に増加し、これに伴い不動産価格は3倍に上昇した。インバウンドの増加はその国の魅力度の指標でもあり、来日インバウンド顧客は更に増えると予想する。

NY、パリ、ロンドン等の世界の他都市と比較すると、日本の坪単価はまだ安い。中国富裕層にとって、不動産を転売する事よりも次世代のための資産形成が投資の目的である。彼らの投資は東京だけに留まらず、京都、大阪、北海道、九州等の地方へ、更には、食事、住環境、サービスという他事業へも拡大をしている。和室・温泉・富士山など、そこにしかないものへの審美眼、保有欲を備える彼らは、日本の全てから感動を受けている。

中国富裕層の価値観の主軸には「幸せ」がある。客観的評価に関わらず自身の行動に満足ができるか、自分の会社の社会への貢献度で幸せを感じる。また、自分という顧客にサービスや商品は向き合っているかどうか。彼らが不満に思う事にビジネスのチャンスがあるのではないだろうか。

 


5.受講生からの感想


中国人富裕層の若さや行動力と、日本の持つ潜在的な価値を再認できた。国をボーダーとせずに、魅力を感じるもの、環境を求めて軽やかに行動をする中国人富裕層の姿は、恵まれた自国に気付かずに日々をやり過ごす日本人にとって、考えさせるものが多いと感じた。


6.塾長からの感想


日本人から見た中国人富裕層の価値観への思い込みを、自国ならではの受け取り方で講義してくださった。日本と中国の良さを積極的に理解されている姿が、現在の不動産の仕事に活かされている事を感じる事が出来た。



2018年07月18日

LS塾第2期第1回において 増田啓介氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日程:2018年6月6日(水)19:00~

2.議題:「住宅とホテル」

3.講師:増田敬介(三井不動産株式会社ホテル・リゾート本部)


4.講義の内容


 

3,000万ドル以上の投資可能資産を所有する世帯を超富裕層(UHNWI)と定義する。
マルチハビテーション(複数の居住空間を行き来しながら生活するライフスタイル)を選択する超富裕層の実像を、三井不動産が携わるリゾートホテルの顧客を通して見つめた。

世界の超富裕層に選ばれるリゾート施設の持つ最大の魅力は、「ここだけ、あなただけ」のローカルカルチャーの体験プログラムである。伊勢神宮の参拝や現地の喫茶店での食事など、気に入ったもの、その場所ならではのユニークなレジャーには桁違いの価値を見出していただく事ができる。不便だが自然豊かな立地において、Less than 50(50室以下)でのスモールラグジュアリーホテルを、開発地のReforest(森林再生)を実現しながら開発していくという三井不動産の方針と、アマン社の思想が合致した伊勢志摩のAMANEMUでは、その土地ならではの体験や地域の人々との交流などのライフスタイルを彼らに提供する。

私にとってホテルとは、住宅から日常性を取り除いたものであり、ラグジュアリーな住宅ほどホテルに近付く。発想を転換すると、住宅とはホテルに日常性を加えたものである。
もはや、超富裕層にとって、ホテルと住宅の間にボーダーは無い。

 


5.受講生からの感想


普段触れる事の無い超富裕層の想像を超えたお金の使い方(=価値観)を垣間見る事ができた。それは、自分には到底真似できない方法である一方、その土地に定住する人にとっては拍子抜けする程当たり前の事に対するものであったりもした。その対極さに超富裕層ビジネスの可能性を感じた。


6.塾長からの感想


無数の困難な課題を乗り超えてこられたであろうご苦労を露ほども感じさせない、意気に溢れる方だった。理路整然とした構成にもお人柄が表れて感じられた。



2018年06月06日