LS塾第3期第2回において 桐山登士樹氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2019年6月26日(水)18:30~

2.講義:「住空間2020現在のトレンドから透視する」

3.講師:桐山登士樹氏(株式会社TRUNKディレクター、富山県美術館副館長、富山県総合デザインセンター所長)


4.講義の内容


 

世界25カ国のエル・デコが選ぶベストデザインに送られる「エル・デコ インターナショナル デザイン アワード(EDIDA)」。この賞では近年日本の生活様式にヒントを得たデザインが取り上げられている。例えば、屏風(パーティション)等で空間を仕切ったり、提灯の明かりのように暖かみのある照明が求められている。このデザインの流れは、日本をピックアップしたトレンドというだけではなく、昨今のライフスタイルのダイバーシティ化に伴い様々な変革の一端と言えよう。とりわけ日本のものづくりが注目されているのは嬉しいことだ。

この変革の必要性が意味するところは、ダイバーシティの中におけるデザインのもたらす効果が大きく起因していると考えられ、つまりデザインが個性を表現する手法として重要であると考えられるからこその変革であると考えられる。
そういった意味で日本等といった国や地域自体にも一つの個性としての意味が与えられ、それを取り入れたデザインが発達することになるのである。日本の街づくりという観点からすれば、各国の都市と類似した都市が評価されるということはなく、むしろ日本らしさを出すことが重要であると認識されていることからもこういった流れの表れが見える。

またこの個性を表現することは国や地域だけではなく、個人においても重要である。
個人の表現の移り変わりをライフスタイルという視点から考えてみると


”衣”

最も個々のクリエイティビティを自己表現できる一つである。
流行としては土台になりやすいTシャツ+ジーンズ等のカジュアルスタイルが進んでいる。

”食”

健康志向に関心が高まっているが、世界的な人口増、高齢化のなかで食は重要なテーマである。人として、これまで以上に健康に意識が向き、流れを作り出しているといえる。

”住”

日本においてみれば、人口減少等も影響し「みんなで大きな家」というものから「個々が住みやすい家」に変わってきてい  る。

 

というように、これらの流れから個性を出すためには個性のあるモノを買うだけではなく、自由な表現の場が形成されたことにより、モノの使い方に個性を求めることができることに注目が集まってきていると考えられる。
例えば、イタリアのミラノマンション PORTA NUOBAではマンション購入時、キッチンは日本のように備え付けではなく別に個人がキッチンを購入することで、個性を表現している。

また、昨今においてはネットワークビジネスにおいて「シェア」することが注目されている。
これはモノを所有することによるアイデンティティの表現から、モノを使ってどのように楽しめるかにその評価が移りつつあることに他ならない。

こういったダイバーシティ化の実現しつつある現代社会において、個人の自由な主張を実現することがデザインの役割であり、追求すべき課題である。

だとすれば、所有せず個人の個性を表現する現在において、建築の在り方にも価値の変革が求められている時代にさしかかったと考えるべきなのではないだろうか。

 

 


5.受講生からの感想


デザインの多様化の意味を考える上で、その発生の原因となったものを事例を交えて捉えることができる講義でした。この講義の内容を踏まえ、今度デザインが向かうべき方向には何があるのか、何があるべきなのかに思いを馳せる楽しさを身に着けることができる回でした。


6.塾長からの感想


順序立てて一つずつ説明していただいたことにより、当塾の目的を基礎から学び、また今後の塾生の方々の担ってほしい役割を理論的かつ直感的に理解することができる内容で、大変ありがたい講義となりました。


 

2019年06月26日