LS塾第2期第3回において 齋藤上太郎氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2018年8月29日(水)18:00~

2.講義:「進化する伝統」

3.講師:齋藤上太郎(株式会社三才 代表取締役社長)


4.講義の内容


 

世界の視点から見たとき、日本は様々な独特の伝統を有している。

その一つである日本に古来からある着物は、もっとも日本の伝統を体現していると思う。
着物自身の柄や、生地はそれだけで人を魅了するに余りあるが、
着物の神髄は、着衣した人物の美しい振る舞いにも発見することができるからだ。

2016年レディー・ガガの来日の際、彼女に着物をプレゼントしたことがあった。
以前より日本の着物に大変興味が有る事を聞いて、来日の記念に着物をプレゼントさせていただいた。
プレゼントされた彼女は、大変喜びつつ、その着物を着ることになったのだが、
彼女は、その着物を着崩すことなく丁寧に着衣していた。

他の人からすれば彼女の奇抜な身に着け方を求めていたかもしれない。
しかし、彼女は「ルーツがあるものを崩さず大切にする」という振る舞いを見せてくれた。
これにより彼女は、着物というものだけではなく、着物が持つ文化や歴史を見事に着こなしていたといえるだろう。
こういった伝統的美意識を生む必然も着物の魅力であるといえる。

一方で、着物は、新たなデザイン性を持つ必要もあると感じる。
これまでの着物は、色合いや柄といったデザインを開花させてきたが、
変動する社会の基で着物の可能性を広げようと考えるならば、
新たな価値感を作り出す様な美意識の追求をすべきであると考える。

現在、年2回着物のファッションショーを開催しているが、
ここでは、着物の色柄だけではなく、スタイリングを発信している。
このような活動を通じて、今後も着物の魅力を表現するとともに、着物の広大な可能性を追求することに注力していく必要がある。

伝統工芸を扱うものは、伝統を守ることと、新しい分野を追求することを常に求められる。

その宿命に人生を賭して追求し続けるものが、『進化した伝統』を体感できる人物となるだろう。



5.受講生からの感想


着物を知り尽くした人間だからこそ、伝統とデザインの両方の観点から着物の本質を認識されているのだと感じた。
そういった、着物を極め、極めた先を様々な視点から捉えようとした結果,魅力的な「ジャージキモノ」という新たな商品に行き着いたことが分かった。


6.塾長からの感想


日本の工芸的価値と日常の中における機能的価値を同時に持つ着物を講師自らが身に着けることによって、日本の美しい立ち居振る舞いが表現されていた。
日本人が日常の所作に求めてきた美しさを体感できた貴重な時間であった。

講演後にあった武石様とのトークセッションでは、和のテイストが組み込まれた「GINZA SIX」のデザインも紹介された。
常に既存の価値感をリードするその姿勢は、日本人や海外の方々にも高い評価を受けていることが理解できた。
和の、古来の価値観だけでなく、まさに講師のコンセプト『進化する伝統』を体感した時間であった。


 

2018年08月29日