LS塾第2期第3回において 武石正宣氏の講義が行われました。


【開催情報等】

1.日時:2018年8月29日(水)19:00~

2.講義:「ライフスタイルと照明デザイン」

3.講師:武石正宣(有限会社ICE都市環境照明研究所所長)


4.講義の内容


 

蝋燭には、洋蝋燭と和蝋燭がある。
洋蝋燭は、縦に細い炎を灯す。これに対し和蝋燭は大きく太い炎を灯し、洋蝋燭にくらべ、揺れの少ない炎となる。
この違いは、西洋と日本の文化の違いに直接起因している。

西洋は、蝋燭をシャンデリアのように多く灯し、部屋を明るく照らした。
これに対し日本は、一つの蝋燭で部屋中を照らすことを目的としており
和には一つの蝋燭で照らし出される空間内での美しさであるという一面に気付かされる。

現代における京都祇園では、昼と変わらない明るい照明の中で歓談されるが、
建物の装飾や、芸子の着物は、歴史を考えれば、少ない蝋燭の灯の中で美しさを求めたものであるといえる。事実、照明を落とした中でのそれらは、妖艶でありかつ雅やかな本来の和の様相を醸し出す。

これらのことから、照明とは、空間の背景や、目的に光が寄り添うことを理想とするものだといえる。

その手法としては、サーガディアンリズムや、色温度を考えることが重要であり
それによって、人を迎え入れる、ストーリーのある光空間がデザインされる。

また、星野リゾートでは軽井沢の高原、京都の竹林、竹富島の石垣、バリのリゾート、そして東京のプライベート空間といった地域性から得られるデザインを活かすことが照明を考えるうえで大切な要素となった。

照明デザインは、それを利用する人々の歴史を考えずには理想に近づくことはできない。

照明の技術も飛躍的に伸びている現代において、自由な発想の中で、今後様々な光空間が現れることとなる。
その中で、ひと際光り輝くデザインとなるのは人々の歴史や嗜好に考えを巡らせた寄り添う光空間であるだろう。

 


5.受講生からの感想


現在の明るい機能的な光ではなく、古来日本の日常を照らした蝋燭のような、そんな闇と共存するような光によって、艶やかにも優しい「和」の本来の世界が浮かび上がってくる。
これらのことから、その場所に根付いた建物や生物をその環境にあった光で照らすことによって、その地域おける本来の伝統や文化を表現できるものであると、照明の在り方について学ぶことができた。


6.塾長からの感想


今回は講師のお二人が感動的な和服で登場するなどのシーンがあった。塾会場自体を暗闇にし、その中に和蝋燭一本だけを灯すことにより、塾会場を魅惑的な舞台に変えられており、照明の効果を身をもって経験できた。また、これまで手掛けられていた作品を通じて、照明の光の向き、量、照らされる素材等を調節することによって如何に美しく表現できるかということをお話し頂いた。



2018年08月29日